ティム・バートン的かと言えば、多くの映画ファンが首を傾げるに違いない。
20世紀半ば、女流絵画がまだ認められていない頃、再婚相手が妻の絵を自分の作品として売り出すというだけの話だが、これが意外にもスリルを感じた。
夫は妻の描いた絵をたまたま自作だとして売り始めるうちに、またたく間にブームとなる。
夫婦は金を稼ぐ為に邁進し、妻は売れる絵を描き、夫はその絵をプロデュースし富も名声も得ていくわけだ。
しかし、売れれば売れるほど傷ついていく妻に僕ら観客は傾倒し、その暴かれるべき嘘に今か今かと緊張感を高めていく。
同時に、妻の描く大きな瞳の子供は極端に悲しみを感じさせ、妻も我が子とも言えるビッグ・アイズにやがて強迫観念さえ持ち始めていく。
ビッグアイズは、心の窓だと妻は言う。
そして様々な人々を逆にこちらから見ているのだとも言っていて、夫はそれを受け売り、トーク番組でも饒舌に語りだす。
しかし、批評家はこのビッグアイズを酷評する。
その評価こそが、偽りの親に産み落とされたとする大きな瞳の子供たちの真実の声とも感じられた。
夫婦は最終的に、どちらが描いた絵なのかという裁判までして白黒をつけるが、それが物語に起伏をつけるものではない。真相はすでに我々が知っているのだ。
嘘だらけの夫の言葉、男性優位であったこの時代で一人の女性が立ち上がる勇ましさに、ビッグ・アイズの母親としての母性を感じてしまうのだった……。