2015年3月13日金曜日

昨日のこと

仕事で上京し、品川から山手線に乗った。
しばらくすると、障害者と思われる女性が、「すみません、後ろを通って良いですかあ?」と立っている僕の後ろを大きな声で通り過ぎた。

大崎駅で、客が入れ替わると斜め前の座席が空いた。
すると女性は座ろうとしていた初老の男に、「座らせてもらえませんかあ?」と丁寧に声を掛けた。
男性も、「どうぞ」と席を譲って、スマホを再びいじりだした。

すると女性は唐突に、「会社で働き始めて何年ですかあ?」と目の前の男性に尋ねた。
男性も少し躊躇しながら、
「今の会社は23年前からになります」と答えると、「1992年からですね、頑張りましたね〜」と女性は言う。
男性は少し照れ気味に、
「そうですね、頑張りましたね」と薄く笑った。

周りの客たちは、僕を含めて二人の会話に聞き入っていた。
明らかに普通ではない風体の女性と初老の男の会話は、その後しばらく続いた。

男は、ひょんな出会いに人生をねぎらわれ、やがて「さようなら」と電車を降りていった。

女性が次に誰かに語りかけることは無かったが、初老の男のやさしさと無垢な女性のやりとりに、なぜか心がほだされた…。