2015年6月27日土曜日

ながらえば

1983年制作のTV番組「ながらえば」を観た。
主演は笠智衆。

大学の上映会で観たのだが、後半から涙が止まらない。
何度拭っても次から次とこぼれ出てくる。
幸いにも観客は僕ともう一人しかいなく、恥ずかしい思いをせずに済んだ。
だが、このドラマ、とにかく参った。

物語は、息子の転勤で住み慣れた名古屋から富山に引っ越していく老人。
彼には一つ気がかりな事があった。

それは、しばらく病院に入院している妻を置いて旅立ってしまわなければならない事だった。
旅立つ前の日に、妻の病院に見舞いに行ったが、診察が長引いていてついには会えぬまま出発してしまったのだ。

老人は事あるごとに妻の事を思い出す。
もしもこのまま会えずに妻が死んでしまったなら、その思いが募り名古屋に戻らなければならない用事があるから金をくれと息子夫婦に言う。だが、息子や嫁は来たばっかりで何を言い出すかと、容赦しない。
老人もその本当の理由を言えずに悶々とした日々を過ごしていく。

だが結局、居てもたっても居られない老人は、嫁のタンスからお金を抜いて出発しようと考える。でも、それも嫁に見つかり、わずかな千円札だけを手に走り出す。

途中、列車の中で老人は特急券を持っていない事を追及され、下ろされてしまう。
そして各駅電車を待つ間、ふと歩き出した街の風景に見とれ、次の電車まで乗り遅れてしまう。

結局、無一文で旅宿に入った老人は、金を持っていない事も気が気でならない。
食事が出ても箸を伸ばせない。

そんなとき、その旅宿で不幸があった。
同じ年くらいの老主人の奥さんが亡くなられたのだ。
一言お悔やみを申し上げたいと訪ねれば、老主人は気さくに話をしだす。

やがて老人は主人に金を持っていない事、妻に会いたくて家を出てきた事を話しだす。
さらに、ここの宿賃も払えないと打ち明けると、老主人は手伝いに金を持ってくるように声を掛け、明日いちばんの特急で名古屋に向かうように進言する。

深く深く頭を下げる老人、翌日妻のいる病院に向かって行く……。

この老人役が笠智衆、旅宿の主人が宇野重吉だ。
この二人の会話と芝居が素晴らしく、このやりとりからクチビルを噛んで我慢しだした。

芝居って何だろう、役者って何だろう。
二人の芝居に、ただただ溜め息が出るばかりだった……。

2015年6月3日水曜日

卒業生

今日、卒業生からドラマ出演の情報が届いた。
嬉しい限りだ。

彼らが俳優になりたいといった時点で、どこにも所属できなくても東京でバイトをしながらチャンスを探せと言っている。

彼らはもんもんとしながら、手っ取り早く自分たちで立ち上げた舞台公演でそのやりきれない気持を満たしていく。

しかも、誰かが観に来てくれて引き上げてくれる事を願いながらだ。

チャンスはすぐには訪れない。
でも、続けていればチャンスに一歩でも近づくはずだ。

彼らの成功の一つ一つは僕の大きな励みである……。